YONISOMANASIKARA

身の回りの現実に起きていることはフィクションの世界より奇奇怪怪である

昭和の怪物 七つの謎

著者の豊富な歴史の知識と人脈によって披露された話から先の戦争を推進した又は影響を与えた人物達の行動と言動を知る事により太平洋戦争の勃発、無残な敗戦に至った背景をさらに考える事が出来た。

 

三つの性格「精神論が好き」、「妥協は敗北」、「事実誤認は当たり前」をあげ安部首相と似ていて選んではならない首相像という事だが東条は敗戦だけでなく国土壊滅の危機を齎した。

 

ただ疑問なのは周囲のものが彼の性格と知力を知りながら2年以上も首相をやらせていた事だ。日本の官庁、企業を見ても組織のトップの方針、行動が明らかにおかしくて変えようとする行動が起きないケースが多い。これは現在の安部首相と自民党の関係にも見られる。

 

一方、石原莞爾は論理的な考えを持つだけでなく周りの空気に左右されず行動できる日本人には珍しく自我が確立した人物ということがわかる。満州事変を企み実行した事や日米最終決戦などの論説を聞いていたのでt闘争を好む典型的な陸軍の軍人と思っていた印象は覆された。満州事変は彼の最終目的の為の恒久平和を目指すための手段だったと理解した。

 

もし彼の中国不拡大路線が実現されたならその後の歴史は大きく変わっていただろう。アジアの国々を欧米列国から植民地解放をし中国を含めた日本と連盟、東亜連盟、して米国との最終戦争に臨むには中国との戦争を終結させねばならなかった。この様な遠い将来を描いたビジョンは当時の陸軍に理解されるのは難しかっただけでなく当時の空気では軍人だけでなく国民も闘争心で固まっている中で平和的折衝は優柔不断、臆病に思われたのでは。

 

立場は異なるが現在9条について国民の間で改憲論争が起きているのと少し似ている気がする。9条は未来の世界平和見据え日本がその指導的立場に立てる条文と国民は隣国の軍事拡張、核戦争の可能性への現在の恐怖に捉えられた論争のように。彼の東亜連盟の構想が退くられたことは日本がこの戦争は大東亜戦争とか八紘一宇とか唱えてアジアの植民地解放の為の戦争だと言うことが空文句で欺瞞だったと言うことを物語っているのではないだろうか。

 

又彼の様に冷静沈着、哲学、信念、論理的思考、雄弁の術、下士官、若い兵隊間での人望、を備え持った人物が予備役に退けられたと言うことをしても大日本帝国陸軍の組織は戦争以前から問題を孕んでいたと考えられる。

 

戦後、石原莞爾氏は核爆弾の発明は大国同士の戦争を無くしていくだろうと述べていたように日本には恒久平和を目指す絶好の機会と捉え日本が道義的国家を各国に先駆けアジア、強いては世界の模範たるべきと考えていたはまさに石原莞爾の面目躍如だ。残念なことは彼は早逝し彼の世界平和の考えを政財界、知識層に影響、貢献することができなかった事である。

 

最終章の疑問は何故吉田茂は護憲に拘ったのか平和憲法との関わりに言及していないが改憲で標的になる憲法9条を守りたかった為ではないかと思う。氏は戦前からの戦争反対主義で日本が515事件や226事件の軍人によるクーデター、帝国軍人の戦争の遂行を目撃している。日本は再び軍隊を持ったら又同じ事が繰り返されると思った

から新憲法は軍部暴走から日本を守ってくれるから護憲を貫いたのでは。